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福岡地方裁判所 昭和55年(ワ)2595号 判決 1985年3月28日

原告 山本保

<ほか一名>

右両名訴訟代理人弁護士 岩本洋一

伊藤祐二

被告 福岡市

右代表者市長 進藤一馬

<ほか一名>

被告両名訴訟代理人弁護士 徳永弘志

松﨑隆

主文

1  被告らは、各自原告らに対し、それぞれ六〇〇万円及びこれに対する昭和五五年四月三日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は、被告らの負担とする。

3  この判決は、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求める裁判

一  請求の趣旨

主文同旨

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は、原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告らの長男山本和保(昭和五〇年八月二八日生、以下「和保」という。)は、昭和五五年四月三日午後四時一五分ころ、福岡市南区大字老司字夘内尺六四七番二、同番三三、同字六四八番二及び同字六四九番二所在の通称「笹池」(以下「本件溜池」という。)に転落して溺死した(以下「本件事故」という。)。

2  本件溜池は、付近の農地のかんがい用貯水のために使用されている公の営造物であり、被告福岡市(以下「被告市」という。)及び被告福岡市大字老司財産区(以下「被告財産区」という。)は右溜池を設置・管理しているものである。

3  被告市が本件溜池を管理していることは、次の事実からも明らかである。

(一) 被告市は、昭和四一年、同四三年の各年度に本件溜池の護岸工事を行ない、また昭和四五年、同五一年、同五二年の各年度において、右溜池北側の堤の上の有刺鉄線を張った柵の設置・改修のための杭木などの材料を右溜池を利用している老司第二水利組合に無償で提供するなどし、本件溜池の維持・修繕に要する費用のほとんどを負担してきた。

(二) 被告市は、本件溜池が危険であることを知らせる福岡市名義の立札を建て、また被告市職員は本件溜池の維持・修繕のため溜池の周囲の状況を定期的に点検していた。

(三) 被告市は、本件事故後も右柵の外側にネットフェンスを設置し、そのフェンスにとりつけた扉の鍵を保管している。

4  本件溜池の管理には、次のような瑕疵があり、本件事故は右瑕疵により発生したものである。

(一)(1) 本件溜池は、その北、西、南側が住宅地(通称「鶴田団地」)に接し、北側住宅地は低くなっているため、右溜池との間には堤(土手)が存し、また、右溜池と西側住宅地との間にはガードレールが、南側住宅地及び東側道路との間には雑木がそれぞれあり、これらが本件溜池を囲んでいる。

(2) 本件溜池北側の堤上には、木杭に有刺鉄線を張った柵があり、その北側に沿って細い踏み分け道ができており、柵の一部は出入口とされ、有刺鉄線を張らず、立看板の一部を利用したものが扉代りに取り付けられていた。

しかし、右の看板を利用した代用の扉は、半ば壊れかかり、鍵が施されていなかったので、子供らもそこを通って容易に池側に入れる状態であった。

(3) 本件溜池北側の堤の内側(池側)は、有刺鉄線の柵のすぐ南側から水面に向って急角度の斜面となっており、その斜面の中程から下部は、コンクリート及び石垣による護岸が施されているため、右刺鉄線を張った柵から池側に入るとそのまま水面へ転落しやすいうえ、転落した場合は、容易に這い上ることができない形状になっていた。

また、右堤は、近隣の大人や子供がつくし取りや魚釣りの目的で立ち入る場所であった。

(二) 右のように本件溜池の北側の堤の内側斜面は、人が水面に転落する危険がある状況であり、有刺鉄線を張った柵の前記看板を利用した代用の扉は前記(一)(2)のとおり半ば壊れかかり、施錠がなかったのであるから、被告らは前記出入口を設けないが、あるいは施錠設備のある出入口を設けるべき義務がある。ところが、被告らは、これを怠り、放置したのであるから、本件溜池の管理に瑕疵があったというべきである。

(三) 和保は、本件溜池北側の堤上の右代用扉から内側(池側)に入り、そのまま急角度の斜面を真下にすべり落ち本件事故が発生した。したがって、本件事故は、右瑕疵によって生じたものである。

(四) よって、被告らは、国家賠償法二条一項により、本件事故によって生じた損害を賠償すべき義務がある。

5  損害

(一) 和保の逸失利益 二六二九万一〇〇〇円

(一〇〇〇円未満切捨て)

死亡時の年齢 四歳

就労可能年数 一八歳から六七歳まで

収入 年額二八一万五三〇〇円

(賃金センサス昭和五二年第一巻第一表産業計学歴計男子労働者)

生活費控除 五〇パーセント

ホフマン係数 一八・六七七一(六三年間の係数二八・〇八六五―一四年間の係数一〇・四〇九四)

算式 二八一万五三〇〇×〇・五×一八・六七七一

原告らは、和保の父母であり、和保の死亡により右損害賠償請求権の二分の一(一三一四万五五〇〇円)ずつを相続した。

(二) 原告らの慰藉料  各五〇〇万円

原告らは、夫婦の一人息子である和保を失ったことにより精神的苦痛を被った。右精神的苦痛に対する慰藉料は各五〇〇万円が相当である。

(三) 葬儀関係費  七一万三九〇〇円

原告山本保は、和保の葬儀関係費として次のとおり合計七一万三九〇〇円を支出した。

(1) 葬儀費    四三万五九〇〇円

(2) 仏壇購入費  二七万八〇〇〇円

(四) 弁護士費用     各六〇万円

原告らは、原告ら代理人両名に対し、本件訴訟の提起・追行を委任し、その手数料及び謝金としてそれぞれ六〇万円ずつを支払うことを約した。

6  よって、原告らは、被告らに対し、それぞれ国家賠償法二条一項に基づく損害賠償として、原告山本保は一九四五万九四〇〇円(4の(一)から(四)までの合計額)のうち六〇〇万円、原告山本睦子は一八七四万五五〇〇円(4の(一)(二)(四)の合計額)のうち六〇〇万円及び右各六〇〇万円に対する本件事故発生の日である昭和五五年四月三日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2の事実のうち、本件溜池が公の営造物であること及び被告財産区がこれを管理していることは認め、被告市が本件溜池を管理していることは争う。

3  請求原因3の冒頭の主張は争う。3(一)の事実及び3(二)のうち、被告市が原告ら主張の立札を建てた事実は認める。3の(三)のうち、被告市が原告ら主張の扉の予備の鍵を所持していることは認める。

4  請求原因4の冒頭の主張は争う。

同4(一)(1)の事実は認める。4(一)(2)のうち、本件溜池北側の堤の上に有刺鉄線を張った柵があり、北側に踏み分け道があった事実は認め、その余の事実は否認する。4一(3)のうち、原告ら主張の斜面の中程から下部がコンクリート及び石垣による護岸が施されていた事実は認め、その余は否認する。

同4(二)の主張は争う。本件溜池の周囲には、高さ約一メートルの木杭が約一メートルの間隔において打たれ、その間に四線ないし五線の有刺鉄線が張られている。そうして、右有刺鉄線による囲いの周辺には「立入禁止」の立札が三か所に設置しているものである。

したがって、本件溜池は、通常有すべき安全性を具備していたもので、原告らに本件溜池の設置・管理に瑕疵はないものである。

同4(三)の事実は否認する。和保は、原告ら主張の代用扉から池側に入って転落したものではなく、右扉の西方に位置する水路部分から池に入り、水辺で遊ぶうち誤って溜池に落ちたか、溜池に入っているうち溺れたか、そのいずれかである。

したがって、本件事故の発生は、右扉の不完全さとは因果関係がないものである。

5  同3の事実のうち、原告らが和保の父母であり、和保の死亡により二分の一ずつを相続したことは認め、その余は争う。

三  抗弁

原告らは、四歳の幼児である和保の監護者として、和保の行動を常に監視し、同人を事故による危険から守るべき義務があるのに、これを怠ったものである。したがって、重大な過失があるから、賠償額の算定にあたっては、原告らの過失を八割以上と評価して斟酌すべきである。

四  抗弁に対する認否

抗弁の主張は争う。本件溜池は、前記のように住宅地の中にあり、かつ、その場所は北側の堤の下から認識できないのであるから、原告らに幼児が本件溜池に近付かないように注意すべき義務はなく、原告らに過失はないものである。

第三証拠《省略》

理由

一  請求原因1の本件事故の発生の事実並びに請求原因2のうち、本件溜池が公の営造物であること及び被告財産区が右溜池を設置・管理している事実は当事者間に争いがない。

二  そこで、被告市が本件溜池を管理している者であるか否かについて判断する。

1  被告市が昭和四一年、同四五年の各年度に本件溜池の護岸工事を行ない、また同四五年、同五一年、同五三年の各年度に右溜池北側の堤の上の有刺鉄線を張った柵の設置・改修に要する材料を右溜池の利用者である老司第二水利組合に無償で現物支給したこと、右溜池への立入りが危険であることを知らせる後記三の立札を右柵の周りに建てたこと、本件事故発生の後に、右柵の外側にネットフェンスを取り付け、その出入口の扉の予備の鍵を保管していること、以上の事実は当事者間に争いがない。

2  そうして、《証拠省略》によれば、被告市は老司第二水利組合に対し本件溜池北側の堤の上に有刺鉄線を張った柵を設置するように指示し、被告市の予算から支出して前記材料の現物支給を行なったこと、被告市の職員は年に三、四回ずつ本件溜池の貯水量をはじめ堤防の状態などの見回りを実施していたことを認めることができる。

3  以上の各事実によれば、被告市は本件溜池を事実上管理している者であると認むべきである(財産区は、法人格を有するが、原則として固有の機関を置かず、財産区のある市町村の長及び議会が財産区の財産や公の施設の維持管理を行なうものである(地方自治法二九五条参照)ことも考慮すべきである。)。

三  次に、本件溜池に管理の瑕疵があったか否かについて判断する。

1  本件溜池は、その北、西、南側が住宅地に接し、北側住宅地は低くなっているため、右溜池との間には堤(土手)が存在し、また右溜池と西側住宅地との間にはガードレールが、南側住宅地及び東側道路との間には雑木がそれぞれあり、これらが本件溜池を囲んでいること、右溜池北側の堤の上に有刺鉄線を張った柵があり、その北側に沿って細い踏み分け道ができていたこと、右北側の堤の内側(池側)は有刺鉄線の張った柵のすぐ南側から水面に向って斜面となっており、斜面の中程から下部がコンクリート及び石垣による護岸が施されていたこと、以上の事実は当事者間に争いがない。

2  《証拠省略》を総合すると、次の事実が認められる。

(一)  本件溜池は、面積五一一一平方メートル、最大水深五・二〇メートルであり、その北側の堤(以下「本件堤」という。)の上には、有刺鉄線の柵、すなわち、高さ約一メートルの木杭が約一メートルの間隔で打たれ、その間に、三線ないし四線の有刺鉄線が張られた柵が東西にわたって設置されている。そうして、右柵には「ここであそんではいけません 福岡市」、「あぶない!!この付近でおよいだりあそんではいけません。福岡市」などと記載された立札が四か所に立てられている。本件堤の上には右有刺鉄線を張った柵(以下「本件柵」ともいう。)の北側に沿って細い踏み分け道がある。また、本件柵の北側には本件事故発生後に金属製のネットフェンスが設置された。

(二)  本件堤の上の有刺鉄線の柵には、昭和四五年ころ、取水作業等のため溜池側に立入る出入口としてその一部に幅一メートル位の有刺鉄線を張っていない箇所があり、そこには、扉が取りつけられていたが、同五一年ころ、これが古くなったので、立看板の一部を利用したものが扉代りに取り付けられた。右の扉代りの看板は、一方の縁をちょうつがいで杭に固定し、他の一方を太い鉄線で二重に曲げて杭に巻き、これを解いて出入りできるようになっていたが、本件事故当時はこの出入口が半ば壊れかかり、一方の杭が傾いて前記扉代りの看板と杭との間に空間ができ、杭に巻く鉄線も外れ、錠も施されておらず、子供らが扉の箇所を通って池側に入れる状態であった。

(三)  本件堤の内側(池側)は、本件柵のすぐ南側から水面に向って約三〇度の急斜面になっており、その斜面を約三メートルほど下った辺りからコンクリートあるいはブロックによる護岸が施され、水際に下りた場合には、足元が滑りやすい状態になっている。

(四)  本件堤は、近隣の大人や子供らがつくしとりや魚釣の目的で立入る場所であり、本件柵を越えて池側の斜面に入り込む者も見られていた。

《証拠省略》によれば、(1)本件柵にとりつけられていた前記扉代りの看板は、昭和五五年三月二〇日ころは、片方はちょうつがいで、もう片方は鉄線でそれぞれ木杭に固定されており、壊われていなかったことが認められるが、他方、(2)《証拠省略》によれば、和保を救助にあたった消防署救護隊員らは、右扉代りの看板の出入口からこれを壊すことなく本件溜池の南側斜面に入ったことが認められるから、右(1)の事実によっては前記(二)の認定を左右するに足りない。

3  右1及び2の事実によれば、本件溜池は、住宅地に接し、近隣の子供らが立入る場所となっており、本件堤の上の柵を越えると南側斜面が水面に転落の危険のある状況にあったということができるところ、本件柵は、その一部に有刺鉄線を張らず、出入口として立看板を利用したものが扉代りに取り付けられていたが、本件事故当時右の扉は半ば壊れかかり、鍵も施されておらず、幼少の子供らが右の扉の箇所から容易に本件堤の南側斜面に出入りできる状態にあったものといえるから、右扉のある出入口部分を補修する等の処置を講ずべきものであったといわなければならない。

したがって、本件溜池は公の営造物として通常具有すべき安全性を欠いていたものというべきであり、被告らの本件溜池に対する管理には瑕疵があったものと認めるべきである。

四  次に、本件事故の発生と本件溜池の管理の瑕疵との因果関係について判断する。

《証拠省略》並びに前記三1、2で認定した事実を総合すれば、本件事故発生の当日、本件堤の北側の斜面の下に和保の自転車が乗り捨てられていたこと、右北側斜面には和保の自転車が乗り捨てられていた付近から堤の頂上にかけて踏み分け道があり、本件堤の頂上には本件柵に沿って踏み分け道があったこと、本件柵の一部に設けられた前記扉の出入口は、幼少の子供でも自由に出入りできる状態であったこと、和保は、本件事故発生の当日、他の幼い子供とともに右出入口の直下に近い取水口付近におり、和保が首だけを水面に出した格好で水中に、他の子供は和保と向き合う格好でコンクリートの護岸上にいたが、その後、和保の姿が見えなくなり、取水口の付近から五、六メートル沖で和保の溺死体が発見されたこと、以上の事実が認められる。

右事実によれば、和保は、本件堤の北側斜面で自転車を乗り捨て、右斜面の踏み分け道を通り、堤上の踏み分け道を経て本件柵の前記壊れかかった扉の出入口に至り、右出入口を通って南側斜面を下り、コンクリートの護岸から水中に入り、足を滑べらせて溺死したものと推認するのが相当である。

被告らは、和保が溜池に入った地点は、右扉の出入口ではなく、その西方に位置する水路部分から溜池に入ったものであると主張するが、和保の死体発見地点が前記認定のとおりであることからすれば、右主張は採用することができない。

してみると、和保の死亡は、被告らの本件溜池に対する前記管理の瑕疵と因果関係があるものというべきである。

五  してみると、被告らは、和保の死亡によって生じた損害について国家賠償法二条一項の規定による損害賠償責任がある。

六  そこで、和保の死亡によって生じた損害の額について判断する。

1  和保の逸失利益

和保は、本件事故当時四歳の男児であった(前記当事者間に争いのない事実)から、本件事故がなければ一八歳から六七歳まで稼働し、その間毎年収入を得られたものであるところ、当裁判所に顕著な賃金センサス昭和五五年第一巻、第一表、産業計、企業規模計、男子労働者、学歴計の年間平均給与額は三四〇万八八〇〇円(二二万一七〇〇円×一二+七四万八四〇〇円)であるから、これを基礎として、右金額から生活費として五割を、ライプニッツ方式により年五分の割合による中間利息をそれぞれ控除して、和保の死亡時の逸失利益の現価を算定すると、一五六三万九五七四円(三四〇万八八〇〇×(一-〇・五)×九・一七六)となる。

そして、原告らが和保の父母であり、和保の死亡によりその権利義務を二分の一ずつ相続したことは当事者間に争いがないので、右金額の二分の一にあたる七八一万九七八七円ずつの損害賠償請求権を承継したことが明らかである。

2  原告らの慰藉料

《証拠省略》によれば、原告らが和保の死亡により多大な精神的損害を被ったことが認められ、その慰藉料としてはそれぞれ三五〇万円が相当である。

3  葬儀関係費

《証拠省略》によれば、原告山本保は葬儀費・仏壇購入費・納骨堂加入金及び同維持費として合計七六万〇四〇〇円の支出を要したことが認められるところ、そのうち四〇万円は本件事故と相当因果関係のある損害を認めるのが相当である。

七  そこで、被告主張の過失相殺について判断する。

前記認定事実によれば、和保は本件事故当時四歳の男児で、すでに自転車を乗りまわしていたのであるから、原告らは和保の親権者として、和保の行動範囲については十分の注意を払い、危険な場所に和保が近付かないように言い聞かせるべきであるところ、《証拠省略》によれば、本件溜池は原告らの住居から大人の足で五、六分位の近い所に位置し、右溜池の北側住宅地内にある原告らの住居から本件溜池の所在を容易に知ることができることが認められるから、原告らは、日ごろ和保に対し、右溜池に近づかないように注意を与えるべき義務があったものというべきである。

そして、《証拠省略》によれば、和保は本件事故当日の午後二時から三時ころまでの間、友達と連れ立って家を出たものであるところ、原告の睦子は、本件事故の発生まで和保の行先を確認することなく放置していたこと及び原告らは和保に対して本件溜池に近付くことについて特に注意を与えたことはなかったことが認められる。

してみると、和保の親権者である原告らには、本件事故の発生について、前記各義務を怠った過失があったものというべきである。

右に認定したところからすれば、原告らの右過失を被害者側の過失として斟酌し、これを五割とみて過失相殺するのが相当である。

そうすると、原告山本保は前記六の1から3までの合計一一七一万九七八七円から五割を減じた五八五万九八九三円、原告山本睦子は前記六の1、2の合計一一三一万九七八七円から五割を減じた五六五万九八九三円の損害賠償請求権を取得したことになる。

八  弁護士費用

弁論の全趣旨によれば、原告らが本件訴訟の提起・追行を原告ら代理人らに委任し、手数料及び謝金としてそれぞれ六〇万円を支払うことを約したことが認められるところ、本件事案の内容、審理の経過、認容額等に鑑みれば、本件事故と相当因果関係のある損害として賠償を求めうる弁護士費用は、各六〇万円をもって相当と認める。

九  したがって、被告らは、各自、原告山本保に対し、損害賠償として六四五万九八九三円及びこれに対する本件事故発生の日である昭和五五年四月三日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金、原告山本睦子に対し、損害賠償として六二五万九八九三円及びこれに対する右と同じ遅延損害金の支払義務があるものというべきである。

一〇  よって、原告らの本訴請求は、いずれも理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九三条一項本文を、仮執行宣言につき同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 菅原晴郎 裁判官 有吉一郎 裁判官井口実は、転補のため署名捺印することができない。裁判長裁判官 菅原晴郎)

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